背景 — ご相談の経緯
累犯窃盗の罪に問われ起訴された、身寄りのない60代の男性が依頼者でした。過去にも同種の前歴があり、このままでは実刑もやむを得ないと見られていましたが、事情を聴くうちに見えてきたのは、罪の背景にある深い孤立と生活の困窮でした。 帰る家も、頼れる家族もない、出所しても迎える人がいなければ、また同じことを繰り返してしまう・・・刑罰を科すだけでは、この負の連鎖は断ち切れないと考え、弁護人として、「どうのように刑罰を軽くするか」ではなく、「どうすれば二度と戻って来ないか」を考えました。
弁護士の仕事 — 争点と対応
争点は、量刑そのものよりも、更生の実現可能性をいかに具体的に示すかにあった。すなわち、出所後の身元引受人の確保、住居と就労という生活基盤の構築、そして本人の更生意欲を裏づける事実を、情状弁護としてどう積み上げるか。福祉と司法をつなぐ視点が不可欠だった。
まず、更生保護や生活困窮者支援に取り組むNPO法人・地域の支援機関(教会等)と連携し、出所後の身元引受先と住居の見通しを確保しました。医療や福祉サービスにつなぐ準備も並行して進めました。 その上で、本人が更生に向けて具体的に動いている事実を証拠として整理し、裁判所に対して「出所後の生活がどう成り立つのか」という社会復帰のプランを、絵空事ではなく実行可能な形で提示しました。
再び同じことを繰り返さないための土台作りが重要。
結果と意義
その結果、執行猶予付きの判決を得て、男性は支援機関のもとで新たな生活を始めました。 刑事弁護を、出所後の生活再建・再犯防止と結びつけて実践した事例であり、「弁護は判決で終わらない」という姿勢を形にした取り組みとなったと思います。
参照した規程・法令
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更生保護制度・地域生活定着支援
出所後の住居・就労・福祉を切れ目なくつなぐ枠組み。
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情状弁護における社会復帰プランの提示
更生の実現可能性を、具体的・実行可能な形で裁判所に示す。
その後
判決後は支援機関のもとで生活を立て直し、再び罪を犯すことなく地域での暮らしを続けている。