背景 — ご相談の経緯
30代半ばを迎えたJリーグのベテラン選手。長年チームを支えてきた一方で、引退後のビジョンは白紙のままだった。プロ選手の現役期間は短く、引退と同時に収入が大きく減る例は珍しくない。本人も漠然とした不安を抱えながら、日々の試合に追われていた。 「引退してから考える」では遅い——現役で交渉力があるうちに、その後の十年を見据えた手を打つ必要があった。
弁護士の仕事 — 争点と対応
課題は、現役中の契約に引退後を織り込めるか、という一点に集約された。具体的には、契約更新時にクラブでの指導者(コーチ)就任の道筋を条件として盛り込めるか。加えて、肖像権の管理、メディア出演・講演といった収入源の確保、指導者ライセンス取得の計画をどう組み立てるかが問われた。
契約更新交渉の場で、単年の年俸だけでなく、引退後のクラブコーチ就任を選択肢として織り込むよう提案した。クラブにとっても、クラブ文化を知る人材を引き留める利点があることを示し、双方の利害を一致させた。 並行して、マネジメント面では肖像権の扱いを整理し、メディア出演・講演・地域貢献活動の機会を計画的に開拓。指導者ライセンスの取得スケジュールも現役中から逆算して組み、「引退=空白」にならない設計を積み上げた。
契約は、現役の年俸だけの話ではない。引退後の十年を、いまの一条に書き込む。
結果と意義
引退後はクラブの育成年代のコーチに就任し、現役時代からの活動を土台に安定したセカンドキャリアを確保した。選手個人の「その後」を契約段階から設計する取り組みは、同じ不安を抱える選手にとってのモデルケースとなっている。
その後
引退後はクラブの育成組織で指導にあたり、現役中に築いたメディアとの関係も継続している。ピッチを去った後も、サッカーに関わり続ける道が保たれた。
補足
セカンドキャリア支援は、一度きりの契約交渉では完結しない。顧問として継続的に関わることで、キャリアの節目ごとに最適な選択を一緒に選べる。
この記録を参考にした同業
- 鈴木 一郎